ものづくりで使用される材料は多岐に渡りますが、それらを大雑把に分類すると以下の5つに分けられます。それぞれの材料は単独で使用される場合と、いくつかの組み合わせ(複合材料)として使用される場合があります。
以下は自動車用途と住宅用途に使用されている材料の例です。ほとんどの材料が5つのうちのどれかの材料を使用していることが分かります。皆さんも自社の製品や身の回りの製品の材料を考えてみてください。
材料の例 | 自動車用製品の例 | 住宅用製品の例 | |
セラミックス系材料 | セラミックス 陶器 ガラス |
フロントガラス スパークプラグ 排ガス用触媒 |
窓ガラス 便器 洗面器 |
金属系材料 | 鉄鋼 銅合金 アルミ合金 |
シャーシ(鉄鋼) ハーネス(銅合金) ホイール(アルミ合金) |
キッチンシンク アルミサッシ 玄関ドア |
プラスチック系材料 | ポリプロピレン ポリエチレン ポリアセタール |
バンパー(ポリプロピレン) シート(発泡ウレタン) ホイールキャップ(PC/ABS) |
浴槽(FRP) 便座(ポリプロピレン) 給排水管(塩ビ等) |
ゴム系材料 | 天然ゴム クロロプレンゴム シリコーンゴム |
タイヤ(天然ゴム等) エアダクト 防振部品 |
パッキン類 免震ゴム 遮音用ゴム |
その他の 天然由来材料 |
皮革 パーチクルボード(木質系) 紙 |
レザーシート(皮革) 内装材(木質系) フィルター(紙) |
床材 キッチンキャビネット 紙製壁紙 |
これらの5つの材料の中で、プラスチックは一番新しい材料です。大量に利用されるようになってからまだ100年も経っていません。それでも、私たちはプラスチック製品に囲まれて生活しています。それは金属やセラミックスなどで作られていた製品が、材料や製造方法が進化するに従ってプラスチックで作られるようになった結果なのです。
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なぜ、プラスチックはこれほどたくさんの製品に使用されているのでしょうか。以下にプラスチックのメリットを簡単にまとめてみます。
メリット | ・腐食しない ・軽い ・複雑な形状を簡単に成形できる (様々な特性を付与/複数部品の一体化) ・デザインの自由度が非常に高い ・表面へのデザイン性付与が容易である (フィルム貼り、シボ、メッキなど) ・電気絶縁性がある ・大量生産が容易 (製品の特徴や条件に合わせて多くの成形法がある) ・プラスチック材料、添加剤、強化繊維などの組み合わせにより、様々な機能を付与することができる ・断熱性が高い ・様々な接合方法がある (接着、超音波溶着、振動溶着、レーザー溶着、熱盤溶着、機械的接合など) |
様々なメリットがありますが、やはり低コストで大量に生産できるというのが最も大きな理由だと思います。条件にもよりますが、各種材料をプラスチック化することにより、かなりの確率でコストダウンができます。私自身、木質材料や金属、ゴムの部品をプラスチック化するコストダウン活動に長い間従事してきたので、その経験からも明言することができます。
近年は、コストに加えて軽量化や断熱性、デザイン性が大きなメリットになっています。自動車は軽量化が燃費改善に直結するため、ガソリンタンクやサイドウィンドーなど様々な部位がプラスチック化されつつあります。10年単位で考えると、シャーシやエンジン本体など、現時点ではハードルが高いと思われる部位までプラスチック化が進展する可能性もあると思います。
断熱性はプラスチックが持つひとつの特性ですが、最近は住宅用の窓枠としての使用が広がりつつあり、住宅の断熱性を高めるのに一役買っています。
また、プラスチック製品の表面上にフィルムやメッキ、塗装、蒸着、スパッタなどを施しデザイン性を向上させる技術を「加飾」といいますが、近年、非常に多くの技術が開発されています(例:布施真空のTOM成形)。プラスチックは安っぽいという既成概念は捨てる必要があるでしょう。
一方、プラスチックには多くのデメリットもあります。以下はプラスチックのデメリットの例です。
デメリット |
・強度、弾性率、硬度などの物性値が低い |
参考記事:「2050年には海中のプラスチックごみの重さが魚の重さよりも大きくなる」
これらのデメリットをしっかり理解し、制御しなければ、不具合の山を築くことになりかねません。実際、市場においてもそれらを理解していないことによるものと思われる不具合が頻繁に発生しています。私自身もたくさんの失敗事例を見て来ました。プラスチック製品の設計を甘く見ていては、痛い目に会うことになります。
プラスチック製品の設計を学ぶ事は、イコールこれらのデメリットを理解し、不具合を起こさないようにすることでもあるのです。
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<設計者のためのプラスチック製品設計>