荷重とは物体に加わる力(外力)のことです。物体に荷重が作用すると、内部に応力が発生します。その応力が材料の許容できる限界(強度)を超えた時、物体は壊れます。強度設計の目的は、製品に荷重が加わった時に壊れないようにすることです。したがって、荷重についてよく理解することが、精度の高い強度設計を行うための第一歩となります。
荷重には様々な形態があります。同じ大きさの荷重でも、その形態が異なると発生する応力や製品に与える影響が異なります。本稿では荷重を以下の3つの視点で分類し、解説していきたいと思います。
①荷重の加わり方による分類
②荷重の分布による分類
③荷重が作用する速度による分類
『図解! わかりやすーい 強度設計実務入門 基礎から学べる機械設計の材料強度と強度計算』(日刊工業新聞社) 田口宏之(著)※本サイト運営者 | |
強度設計をしっかり行うには広範囲の知識が必要です。本書は、多忙な若手設計者でも強度設計の全体像を効率的に理解できることを目的に執筆しました。理論や数式の導出は最低限にとどめ、たくさんの図を使って解説しています。 |
①荷重の加わり方による分類
荷重の加わり方の違いにより、以下のように分類することができます。
荷重の加わり方によって、材料が持つ強度は異なります。そのためプラスチックの物性表には「引張強さ」「圧縮強さ」など、荷重の加わり方ごとにデータが掲載されています。
②荷重の分布による分類
同じ大きさの荷重でも、物体に作用する分布の形態によって影響が異なります。
広い面で力を受ける場合や水圧などが分布荷重に相当します。分布している荷重が均一な場合は、等分布荷重といいます。完全に1点に集中するような荷重はほとんどありませんが、製品の大きさと比較して、荷重が作用する範囲が十分に小さい場合は、集中荷重だと考えることができます。
これらの考え方をもっともよく使うのは、はり(梁)の計算をする時です。はりに荷重が加わった時の変形量や発生応力は、公式を使って手計算や表計算ソフトで簡単に算出することができます。使用する公式は、荷重が分布荷重なのか集中荷重なのかによって異なりますので、荷重の分布形態の把握が必要になります。
③荷重が作用する速度による分類
同じ大きさの荷重でもゆっくり力を加える場合と、短時間のうちに衝撃的に加える場合では、製品に与える影響が大きく異なります。
荷重の大きさが時間とともに変化変化する荷重を動荷重、変化しない荷重を静荷重といいます。一般に材料に与える影響の大きさは以下のようになると考えられています。
静荷重 < 繰り返し荷重 < 交番荷重 < 衝撃荷重
動荷重に関する物性値は入手できないことが多く、評価・検証にも大きな労力が必要になるため、強度設計の難易度は上がります。
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【参考文献】
日本機械学会(編) 『機械工学便覧 基礎編 材料力学』
小峯龍男 (著) 東京電機大学出版局 『Mathematicaによる材料力学』
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