要求事項をブレークダウン(細かく分解)しながら、プラスチック製品の材料、成形法、二次加工、形状について検討していきます。
今回はまずプラスチック材料について詳しく説明します。
プラスチック材料と金属材料の比較
要求事項を安定して満足させるプラスチック材料を選定するためは、プラスチック材料の性能がどのようなプロセスを経て決まるのかを理解することが大事です。金属材料は設計者にとってプラスチックと同じぐらい身近な材料ですが、その性能が決まるプロセスはプラスチックとは大きく異なります。
まず基本的に金属材料は、その性能がJISや材料メーカーの規格でしっかり決められています。
【SUS304の機械的性質 JIS G4305】
機械的性質 | 値 |
耐力 (N/mm2) |
205以上 |
引張強さ (N/mm2) |
520以上 |
伸び (%) |
40以上 |
硬さ (HV) |
200以下 |
このように材料の性能が明確になっている場合、例えば材料に必要な引張強さが「安全率を加味して450N/mm2」などのように分かっていれば、設計者は上記表のSUS304を安心して指定することができます。また、図面に「使用材料:SUS304」と記載しておけば、どの取引先でも同じ性能の材料が使用されます。
また、金属材料(規格品)が材料メーカーから出荷された後に、熱処理などの手が加えられ、その性能が変化するということも通常はありません。つまり、金属材料(規格品)の場合、材料メーカーが製造した時点でその性能は基本的に確定していることになります。
一方、プラスチック材料は金属材料のように物性が規格化されていません。材料メーカーが出している物性表には、下記のように免責の一文が盛り込まれていることが普通です。
ABS物性表(出所:UMG ABS株式会社総合カタログ)
<赤線免責文>
「表中の数値は定められた試験法に基づいて得られた自然色の代表値であり、保証値ではありません。」
実際、設計の実務上において、材料メーカーが出している物性値は、参考程度あるいは大まかな材料の方向性決めにしか利用できません。それはプラスチック材料の性能がどのようプロセスを経て決まるかについて理解して頂ければ、よく分かるのではないかと思います。
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