プラスチック材料の性能は、以下の2つの要因によって決まります。
①材料構成
⇒ポリマー(原料)、配合剤、再生材などの構成
②成形条件
⇒材料の流れ方、熱履歴、成形管理状況などの条件
つまり、材料に何が含まれていて、どのような条件で成形されるかによって材料の性能が決まるということです。金属材料は材料メーカーが製造した時点でその性能が確定しますが、プラスチック材料は材料メーカーが製造した時点では、まだその性能が確定していないということになります。
①材料構成
下記はプラスチック材料の取引の一例ですが、様々な配合剤や異種原料などが各メーカーにおいて混錬されるのが一般的です(ここでは簡単にするために商社は除いています)。
<材料メーカー>
材料メーカーはポリマー(原料)の製造元です。材料メーカーはポリマーだけではなく、顧客ニーズに合わせて、ポリマーに配合剤を加えるなどした多種多様な材料を品揃えしています。カタログ品については物性データの一部を公開し、サンプルチップも準備しています。材料を選ぶ際の基礎評価に活用する設計者は多いと思います。
材料メーカーが品揃えしているカタログ品は、基本的に大量生産品ですので、問題ないレベルで管理・製造されていると思われます(量が多いので管理不良を起こすと、各ユーザー企業からクレームが入る可能性が高い)。したがって、材料メーカーから出荷される時点では、材料の性能の安定性は確保されていると考えてよいでしょう。(材料の性能の安定性=特定の条件で成形したサンプルを、特定の条件で測定した時の性能の安定性)
近年は材料メーカーも、単価を高く設定できるコンパウンディング(個別カスタム材料)に力を入れていますので、材料メーカーにコンパウンド製造を依頼することもあるでしょう。その生産量があまり多くない場合は、少量生産可能な協力企業に生産委託する可能性があり、材料の性能の安定性には注意が必要かもしれません。安定性に不安がある場合は、抜き取りで物性の一部を評価してもらうなど、材料メーカーの担当者とよく話をしながら進めることが重要でしょう。
材料の性能は材料メーカーが出荷した時点を出発点に、次回以降で説明するプロセスを経て、少しずつ変化していくことになります。
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※参考(1)
材料メーカーから出荷される材料は、コンパウンドメーカー(コンパウンダー)や成形加工メーカーから見ると、まだ配合剤などを何も加えていない材料という意味で、原料という言い方をすることがある。
※参考(2)
材料メーカーは巨大な製造装置が必要となるため、多くのメーカーが規模の大きな企業である。近年は、国内市場の縮小とグローバル競争の激化に伴い、合従連衡が繰り返されており、各材料メーカーは複雑な資本関係にあることが多くなっている。競合させるつもりで数社に話を持って行ったが、実は全部グループ企業だったということもあり得る。
【材料メーカーの例】
材料 | 材料メーカー |
ポリプロピレン |
・プライムポリマー |
ポリエチレン |
・日本ポリエチレン |
ポリスチレン |
・PSジャパン |
ABS |
・テクノポリマー |
塩ビ |
・カネカ |
※参考(3)
材料メーカーは性能を測定する設備が十分にあり、材料の専門家も揃っているので、連携しながら設計を進めることが望ましい。しかし、材料メーカー特有の事情もあるので、以下のような点に留意しながら、連携の仕方を検討した方がよい。
・材料の用途によって、物性データの揃い方には偏りがある。
※自動車など量が多い製品向けであればデータがたくさん揃っているケースが多い。私が在籍していた住宅設備業界向けには、データがあまり揃っておらず自社で測定せざるを得ないことが多かった。
・材料が汎用的で販売期間が長い場合は、物性データが豊富に揃っていることが多い。逆に特殊で販売期間が短い場合は、揃っていないことが多い。
※特殊な機能や性能が必要でなければ、長年使われ続けている汎用的な材料を選んだ方が、データがたくさん揃っているので設計は進めやすい。また、物性表に掲載されていないデータでも材料メーカーの営業担当に聞いてみると、提供してもらえることが多い。
・最終的な製品にどのような配合剤が加えられているかを知らないことが多い
※材料メーカーから出荷された材料にコンパウンドメーカーや成形加工メーカーで配合剤が加えられるが、材料メーカー自身はそこまでの情報をつかんでいない(ユーザー企業と共同開発するようなケースは別)。
・材料メーカーは大企業が多いがゆえに、柔軟性とスピードを求めることは難しいことが多い。
※使用量が少ない場合は特に顕著である。材料の標準化を進めて単一グレード当たりの使用量を増やすことは重要である。
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