プラスチック製品の要求事項抽出 フレームワークの活用

自社で設計したことがある製品と類似の製品を設計する場合には、要求事項抽出の作業負荷はそれほど大きなものにはなりません。一方、自社で類似製品の設計をしたことがない場合や新規性が高い場合は、非常に大きな作業負荷となります。このような場合、思いつくままに要求事項を抽出していては、抜け・漏れが発生しやすくなります。そのような抜け・漏れを防止するために、各種のフレームワークが役に立ちます。

フレームワークとは情報を整理する上で、枠組みとなる考え方のことです。3C分析、SWOT分析、4Pなど有名なフレームワークがたくさんあるので、普段から使用されている方も多いのではないでしょうか。

 

以下で要求事項を抽出する上で役に立つフレームワークをいくつか紹介します。

 

QCD


製造業における最も基本的なフレームワークのひとつがQCDです。皆さんもよく使っているのではないかと思います。製品の要求事項を抽出する際も、このフレームワークは非常に便利です。

QCD 説明 要求事項の例
Q 品質、機能、性能、仕様など

・接着可能である
・子供の手でも持ちやすい
・直射日光下でも劣化しにくい
・滑りにくいような表面処理を行う

C 原価、投資、販売価格など

・製品原価:125円以下
・金型投資:200万円以下
・設計試作予算:50万円
・販売予定価格:350円

D 納期、ロット、設計期間など

・発売日:6か月後
・発注ロット:500個/ロット
・年間発注予定数量:2万個
・設計リードタイム:4か月以内

 

製品ライフサイクル


製品には商品企画から始まって、調達、製造、使用、廃棄に至るまで、ライフサイクル毎に様々な機能や性能などが求められます。「使用」時の要求事項はしっかり考えても、「製造」や「出荷」時の要求事項は抜けが発生してしまうこともあるのではないでしょうか。ライフサイクルのフローに合わせて要求事項を考えると、抜け・漏れを少なくすることができます。

ライフサイクル 説明 要求事項の例
企画・設計 商品企画、基本設計、構想設計、詳細設計、評価、審査、設計期間など

・設計リードタイム6か月以内
・製品原価80円以下
・金型投資100万円以下
・発売日:10か月後

調達 原材料の調達、部材の調達、輸送、コストなど ・製品納入リードタイム2W以内
・プラスチック材料は社内標準材料(PP○○グレード)を使用
・発注ロット:1,000個/ロット
・年間発注予定数量:2万個
製造 製造性、生産性、在庫、検査など ・外観検査基準明確化
・再生材の使用率明確化

・BCP対応
・直射日光下での保管不可
出荷 輸送、施工性、据付性など ・輸送時に製品面にキズが入らない
・トラック内の高温で変形しない
・社内基準に準じた包装材強度
・包装材への製品品番印刷
販売 パッケージ意匠、形状など ・機能が一目で分かるパッケージ
・10段以上段積みできる
・カラフルな品揃え
・販売予定価格280円
使用 機能、性能、使いやすさ、耐久性など ・子供から大人まで使える
・食洗機を使用できる

・2年以上の耐久性
・エッジで怪我をしない
アフターサービス 保守サービス性、メンテナンス性など ・保守サービスマニュアルの準備
・お手入れ方法をパッケージに掲載
・デートマークの刻印
・製品品番の刻印
廃棄 回収、リサイクル性、分解性、環境適合性など ・環境負荷の低い原料を使用
・廃棄方法をパッケージに掲載
・再生材の使用
・過剰包装を行わない

 

時間のフローに合わせて考えることは、抜け・漏れをなくすためには非常に有効だと思います。「使用」時についても、1日24時間、1年365日のフローでどのような使われ方が有り得るのかを考えるなど、様々な応用が可能です。

スポンサードリンク

 

デザインフォーエックス DfX(Design for X) 


製品のライフサイクル毎に、検討すべき課題を明確に表現したものが"DfX(Design for X)"です。"X"の部分に検討すべき具体的な課題が入ります。すなわち、"X"の部分が要求事項となります。フロントローディングの重要性を語る場合によく使われる用語ですが、製品の要求事項を抽出する際のフレームワークとして使うことができます。

 

DfX 説明 要求事項の例
DfM 製造性 
(Design for Manufacturability)
・外観検査基準明確化
・再生材の使用率明確化
・BCP対応
・直射日光下での保管不可
DfT 試験容易性 
(Design for Testability)
・試験サンプルが入手可能である
・試験器具が使用可能である
・試験規格が共通である
DfA 組立性 
(Design for Assembly)
・溶剤を使った接合を行わない
・汚れが目立ちにくい製品表面とする
・静電気で汚れないようにする
DfE 環境適合性 
(Design for Environment)
・環境負荷の低い原料を使用
・廃棄方法をパッケージに掲載
・過剰包装を行わない
DfD 易分解性 
(Design for Disassembly)
・異種材料を使用しない
・接着しない
・特殊工具を必要としない
DfR リサイクル性 
(Design for Recycling)
・再生材を使用する
・熱可塑性プラスチックを使用する
・生分解性プラスチックを使用する
DfS 保守サービス性 
(Design for Service)
・保守サービスマニュアルの準備
・デートマークの刻印
・製品品番の刻印

 

その他にも活用できるフレームワークはたくさんあります。以下の記事もご参照ください。

 

参考記事:【設計者のためのフレームワーク】 5W1h

参考記事:【設計者のためのフレームワーク】 5M

参考記事:【設計者のためのフレームワーク】 製品の使われ方の分類

 

スポンサードリンク

 
 
最終更新 2016年5月17日
 

 

<設計者のためのプラスチック製品設計>

 

投稿日:2016年5月17日 更新日:

Copyright© 製品設計知識 , 2024 All Rights Reserved.