曲げ荷重を受ける細長い部材をはり(beam)、主に垂直方向の圧縮荷重を受ける細長い部材を柱(column)といいます。はりと柱を適切に組み合わせることによって、必要な強度と剛性を持った構造物を経済的に作ることができます。そのため建築や機械など様々な構造物で広く利用されています。
曲げ荷重を受けたはりの振る舞いを計算することができれば、建築や機械だけでなく、様々な製品の強度設計において応用が可能です。プラスチックは一体成形されることが多いため、一見するとはりと分かるような部分は少ないように思えるかもしれません。しかし、以下の図のように構造の一部をはりとみなすことによって、簡易的な強度計算をすることができます。リブの高さや本数を検討する際にも、はりの計算式を使えば簡単に当たり付けをすることが可能です。
はりの計算式は書籍などで広く公開されており、表計算ソフトなどを使えば、電卓と同じぐらい手軽に強度計算をすることができます。
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はりの強度計算で分かること
はりの特性は身近なもので実感できます。プラスチック製の定規を下図のように①と②の方向に曲げた時、どちらの方が簡単に曲がるでしょうか。また、どちらの方がより小さな力で壊れるでしょうか。
感覚的に分かる通り、①の方が曲がりやすく、小さな力で壊すことができます。②の向きは人の力では壊すことができないぐらいの強さを持っています。つまり、材料や断面形状、長さが同じでも、力を掛ける方向によって物体の曲がりやすさや強さは異なるということです。
はりの強度計算に必要な項目と、その結果分かることの主なものを以下で整理しています。
項目 | |
計算式の選択 |
・荷重の種類(分布荷重/集中荷重 等) |
計算式へ入力 |
・はりの長さ |
計算結果 |
・たわみ(変形量) |
はりの種類により適用すべき計算式が異なりますので、荷重の種類と支持方法を明確にして、計算式を選択します。次にはりの長さやヤング率(弾性率)などを計算式に入力します。表計算ソフトなどを使うことにより、即座にたわみ(変形量)、応力、ひずみを得ることができます。これだけで簡易的な強度計算が完了しますので、あとは計算結果を評価し、必要に応じて材料や断面形状などを調整します。
このようにはりの強度計算は非常に手軽です。しかし、はりについての基本的な理解がなければ、数ある計算式のどれを使えばよいのか、また、計算結果をどのように評価すればよいのかが分かりません。はりの強度計算に関して、基礎的なことは最低限知っておく必要があるのです。
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はりの種類
はりは支持方法と固定方法の組み合わせにより、多数のバリエーションが存在します。本稿ではその中でも、基本的かつ実務においてよく使うものを中心に解説します。
<はりの支持方法>
基本的なはりの支持方法は単純支持と固定支持です。
単純支持における支持点では、はりは移動することができませんが、回転することはできます。固定支持における支持点では、移動も回転もできません。したがって、はりの支持方法が異なると、はりの変形や発生する応力が変わってきます。
<荷重の種類>
はりに作用する荷重には、分布荷重と集中荷重があります。
<はりの種類>
はりの支持方法と荷重の種類を組み合わせることによって、はりに多数のバリエーションが生まれます。以下はその組み合わせ例です。
※支持点が3個以上あったり、荷重が複数存在するケースなど、もっとたくさんの種類が存在します。
それぞれのはりにおいて、適用する計算式が決まっています。はりの強度計算を適用したい対象が、どの種類のはりに最も近いのかをよく見極めることが重要です。
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【参考文献】
日本機械学会(編) 『機械工学便覧 基礎編 材料力学』
村上敬宜 『材料力学』 森北出版
<設計者のためのプラスチック製品設計>
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