リスクアセスメントの進め方(③リスクの見積り/評価(1))

前回はリスクアセスメントの進め方のうち「②危険源の特定」について解説しました。

 

前回記事:リスクアセスメントの進め方(②危険源の特定)

 

 

今回は最後のステップである「リスクの見積り/評価」について解説します。

 

 

risk-assessment3

 

 

「①使われ方の想定」「②危険源の特定」のステップにより、製品の危険源(ハザード)とそれにより引き起こされる可能性のある危害を想定しました。今回のステップでは、その時のリスクを定量的に見積り、許容可能(=安全)かどうかを判断します。リスクアセスメントの核心のステップです。

 

 

 

リスクの見積り/評価を行う前に、もう一度リスクについておさらいしておきましょう。リスクは危害の程度と発生頻度の組み合わせです。下記図の右上に行くほどリスクが大きくなります。

 

 

riskmap.png

 

 

危害の程度が大きくても(死亡などの重大な結果)、発生頻度が極端に小さければ、社会的に許容される可能性があります。一方、危害の程度が小さくても、発生頻度が高ければ、安全だとはみなされません。

 

したがって、製品のリスクが許容可能かどうかを判断するためには、想定した危害の程度と発生頻度を、それぞれ明確にする必要があります。上記の図で言うと、製品のリスクが何色の部分に該当するかを明確にし、そのリスクが許容可能かどうかを判断します。

 

 

危害の程度と発生頻度を明確化するためには、それぞれを定量的に表す必要があります。下記でそれぞれの定量的表現方法について解説します。

 

 

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危害の程度の表現方法


 

下記表は危害の程度の表現例の一つです。国内では行政を含め、多くの企業が利用しています。

 

 

危害の程度の表現例
(引用:リスクアセスメント・ハンドブック(経済産業省))

  定性的な表現 人に対する危害 火災
致命的 死亡 火災・建物焼損
重大 重傷、入院治療 火災
中程度 通院加療 製品発火・焼損
軽微 軽傷 製品発煙
0 無傷 なし なし

 

 

「①使われ方の想定」「②危険源の特定」のステップで想定される危害の大きさが、この表のどこに該当するのかを判断します。

 

 

下記は前回の記事で想定した危害発生のシナリオから、危害の程度を推定したものです。

 

 

【危害の程度検討の例】

危険源(ハザード) 危害 危害の程度
ファン
(幼児が鉛筆を入れる)
ファンが割れて飛散し、幼児の目に入る Ⅱ(通院加療)
転倒
(扇風機の重量)
乳児が転倒した扇風機で怪我をする Ⅱ(通院加療)
電気
(長期使用による劣化⇒火災)
火災 Ⅲ(火災)
電気
(トラッキングによる火災)
電気(トラッキングによる火災) Ⅲ(火災)
台座裏面のエッジ エッジによる怪我 Ⅰ(軽傷)

 

 

 

当然、それぞれの危険源(ハザード)に対してどのような設計対応をしたかにより、危害の程度は異なってきます。同じ扇風機でも業務用と家庭用では、ファンの大きさも製品の重量も違います。自社の製品の設計内容をよく見極め、危害の程度を判断します。

 

 

 

 

発生頻度の表現方法


下記の表は発生頻度の表現方法の一つです。国内では行政を含め、多くの企業が利用しています。法律や規格で決まっているわけではありませんが、行政や日科技連の研究などにより、下記表の考え方が広く使われるようになっています。

 

 

発生頻度の表現例
(参考資料:リスクアセスメント・ハンドブック(経済産業省))

定性的な表現 定量的表現(件/台・年)
【適用製品】
自転車/エスカレーター等
【適用分野】
自動車/電動車椅子等
【適用分野】
家電/日用品等
5 しばしば発生する 10-2 10-3 10-4超 
4 しばしば発生する 10-2以下~10-3  10-3以下~10-4 10-4以下~10-5超 
3 時々発生する 10-3以下~10-4 10-4以下~10-5超  10-5以下~10-6超 
2 起こりそうにない  10-4以下~10-5 10-5以下~10-6超  10-6以下~10-7超 
1 まず起こり得ない 10-5以下~10-6 10-6以下~10-7超  10-7以下~10-8超 
0 考えられない 10-6以下  10-7以下  10-8以下

 

 

「①使われ方の想定」「②危険源の特定」のステップで想定される危害が、どの程度の頻度で発生するかを想定します。

 

 

発生頻度を検討する上で注意しなければならないことが2つあります。

 

1つは同じ「5:頻発する」でも、製品によって発生頻度が異なることです。長い歴史があり危険性が広く社会に共有され、かつ有用性が高い製品などは、発生頻度が高くても社会的に許容される傾向にあります。一方、家電や日用品などの一般的な製品の多くは、高い発生頻度は許容されません。したがって、自社の製品がこの表のどの列に該当するかは、同業他社品のリコール事例、自社の不具合情報などを元に決めておく必要があります。

 

 

もう1つは、発生件数が「件/台(稼働台数)」ではなく「件/台・年(累積稼働台数)」であることです。市場で稼働している時間が長いほど、事故が発生する可能性が高くなります。稼働時間に関わらず正しく評価するために、1年当たりの稼働台数に換算して計算します。

 

 

下記表の製品A、Bを例に考えてみます。

 

 

  稼働台数(台) 累積稼働台数(台・年)
製品A

年間出荷台数:1万台
出荷継続期間:10年

1万台/年×10年
 =10万台
1万台/年×10年×10年×1/2
 =50万台
 製品B

年間出荷台数:10万台
出荷継続期間:1

 10万台/年×1年
 =10万台
 10万台/年×1年×1年×1/2
 =5万台

 

稼働台数(台) = 年間出荷台数×出荷継続期間

累積稼働台数(台・年) = 稼働台数×出荷継続期間×1/2

 

 

製品A、B共に事故が1件発生したとすると、稼働台数ベースで見た場合、発生頻度は2つの製品で同じです。しかし、累積稼働台数ベースで見た場合、発生頻度は10倍違うことになります。リスクアセスメントの発生頻度は、累積稼働台数で計算します。計算は少し分かりにくいですが、製品Bよりも製品Aの方が安全性が高いということは、感覚的に理解できるのではないでしょうか。

 

 

ちなみに、累積稼働台数の計算で1/2を掛けているは、累積稼働台数の計算が三角形の面積になるからです。

 

 

frequency-of-occurrence

 

 

以下で簡単な計算ができます。

 

 
 

 

 

次回に続きます。

 

 

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最終更新 2016年8月12日

 

 

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ポイント①設計プロセスの中に組み込む(1)
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