前回は、リスクアセスメントの進め方のうち「①使われ方の想定」について解説しました。
今回は、「危険源の特定」について解説します。
「①使われ方の想定」で意図する使用、予見可能な誤使用を明確にしました。次は製品にどのような危険源(ハザード)があるかを特定します。そして、想定した使われ方と危険源(ハザード)を組み合わせて、どのような危害の発生が予想されるかを検討します。
扇風機を例に解説します。
【扇風機の危険源(ハザード)の例】
【危害発生のシナリオの例】
意図する使用 予見される誤使用 |
危険源(ハザード) | 危害 |
幼児が鉛筆をファンの中に入れる | ファン | ファンが割れて飛散し、幼児の目に入る |
大人の体が扇風機に当たり、寝ている乳児に向かって転倒する | 転倒(扇風機の重量) | 乳児が転倒した扇風機で怪我をする |
10年以上に渡って使用する | 電気(劣化による火災) | 火災 |
誤って水をこぼす | 電気(トラッキングによる火災) | 火災 |
扇風機の台座を持って運ぶ | 台座裏面のエッジ | 怪我 |
使われ方の想定と同様に、危険源(ハザード)の抽出漏れは製品事故に直結します。抜け・漏れなく抽出できるような工夫をすることが重要です。下記の危険源(ハザード)リストの活用や安全チェックリストを使った方法が一般的です。
※危険源(ハザード)リスト
ISO12100やEC(欧州委員会)消費生活用製品のリスクアセスメントガイドラインでリスト化されている危険源(ハザード)のリスト
参考記事:設計者のためのフレームワーク 「危険源リスト(ハザードリスト)」
実際の設計においては、リスクアセスメントのためだけに危険源(ハザード)の特定という作業をすることは非効率です。製品の使われ方の想定⇒危険源(ハザード)の特定⇒リスクの見積り/評価⇒設計対応というリスクアセスメントの一連の流れは、設計プロセスそのものだからです。設計時に危険源(ハザード)は特定していることが多いはずなのです。
したがって、リスクアセスメントは設計プロセスの中にうまく組み込んで行うことが効率的です。それに関しては後で詳しく解説しますが、まずはリスクアセスメントの考え方を理解してください。
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最終更新 2016年8月12日
【リスクアセスメント記事一覧】
・リスクアセスメントの必要性
・リスクアセスメントの進め方(①使われ方の想定)
・リスクアセスメントの進め方(②危険源の特定)
・リスクアセスメントの進め方(③リスクの見積り/評価(1))
・リスクアセスメントの進め方(③リスクの見積り/評価(2))
・実務におけるリスクアセスメント実施のポイント
・ポイント①設計プロセスの中に組み込む(1)
・ポイント①設計プロセスの中に組み込む(2)
・ポイント②メリハリをつける
・ポイント③設計者の意識を高く保つ取組みを継続的に実施する
・ポイント④リスクのチェック・レビュー・承認をいつ誰が行うかを明確にする