3ステップメソッド(ステップ②:保護装置(安全装置))

前回、設計者が最優先に取り組むべきリスク低減策である、ステップ①の本質的安全設計を解説しました。

前回記事:3ステップメソッド(ステップ①:本質的安全設計)

 

今回はステップ②の保護装置(安全装置)について解説していきます。

3step-2

 

保護装置(安全装置)は、ステップ①の本質的安全設計でリスクを十分に低減できない時に採用する方策です。この方策により危害の程度を低減することはできません。発生頻度を低減させることだけが目的のステップです。

ステップ①の「(3)危害の発生頻度を小さくする」との違いは、製品の基本機能に追加して保護装置(安全装置)を使用することです。

 

今回も扇風機を例に解説します。

 

fan-hazard

扇風機の危険源(ハザード)

 

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扇風機の保護装置(安全装置)の例


 

 危険源(ハザード) 対応方法
モーター
(火傷/火災)
 温度ヒューズ(過熱時停止)
電気
(火災)
 電流ヒューズ(過電流時停止)
ファン
(巻き込まれ/飛散)
 接触感知センサー(触れるとファンを停止させる)
ファン
(巻き込まれ/飛散)
 ガード

 

保護装置(安全装置)よりも本質的安全設計を優先すべき理由は、保護装置(安全装置)が機能しない可能性があるからです。どんなに信頼性の高い部品でも一定の割合で故障しますし、使用環境によっては想定した寿命を確保できないことも考えられます。

「ものは壊れる」ということを前提にすると、ヒューズやセンサーなどによるリスク低減策だけに頼ってはいけないことが分かると思います。

「人は間違える」ということを考えると、人の誤った使い方をセンサーで検知できない可能性もあります。六本木ヒルズの回転ドアでは、小さな子供の侵入を十分に検知することができず、痛ましい事故が発生しました。

したがって、あくまでステップ②の保護装置(安全装置)は、ステップ①でリスクが低減できない時にやむを得ず使う手段だと考えておくべきです。

 

保護装置(安全装置)が機能しなかった例


 

保護装置(安全装置)が機能しなかったことにより、製品事故やリコールになった例を2つ紹介します。

<ドアサッシュモールによる怪我:マツダ>

sashmall

出所:国土交通省

 

金属製のドアサッシュモールの端部により、怪我をするおそれがあるということでリコールに至った事例です。

ドアサッシュモール端部のエッジが危険源(ハザード)で、樹脂製プロテクターが保護装置(安全装置)になります。3ステップメソッドに従えば、ステップ①の本質的安全設計でエッジを除去することを優先すべきでした。しかし、この事例ではエッジを除去せずに(筆者の推定)、ステップ②の保護装置(安全装置)として樹脂プロテクターを使いました。

意匠上の観点から樹脂プロテクターは必要でしょうから、樹脂プロテクターで隠れるエッジの除去を指示することは、設計者にとって悩ましい判断だと思います。多くの設計者は1円単位でのコスト低減を求められているからです。安全とコストはこの事例のように、トレードオフの関係になりやすいものです。リスクアセスメントにより定量的にリスクを見積り、評価しながら設計を進めることも一つの方法だと考えます。

保護装置(安全装置)に頼り過ぎることの危険性を学べるよい事例だと言えるでしょう。

 

 

<加湿器による火災:TDK>

 

tdk

 

出所:nite/
経済産業省(消費生活用製品安全法に基づく危害防止命令発動に係る経緯等)

 

加湿器の蒸発皿に固定していたヒーターが外れ、底ぶたで過熱、火災に至った事例です。老人ホーム火災の原因となり、6名が死傷、経済産業省より危害防止命令を受けました。

ヒーター、可燃性の底ぶた(樹脂製)が危険源(ハザード)で、2本の温度ヒューズとバイメタルスイッチが保護装置(安全装置)になります。事故品ではヒータ自体が脱落し、底ぶたで過熱したため、安全装置が機能しませんでした。いかに高性能な保護装置(安全装置)を取り付けていても、それが機能しなければ、安全を確保することはできません。

この事例からも、保護装置(安全装置)に頼り過ぎることの危険性を理解することができます。

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【参考資料】
ISO/IECガイド51:2014(JISZ8051) 「安全側面-規格への導入指針」

【3ステップメソッド】
3ステップメソッド
3ステップメソッド(ステップ①:本質的安全設計)
3ステップメソッド(ステップ②:保護装置(安全装置))
3ステップメソッド(ステップ③:使用上の情報)
身の回りの製品の「残留リスク」事例(1)
身の回りの製品の「残留リスク」事例(2)

最終更新 2016年7月29日

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