メルマガ「製品設計知識」2024年6月11日号

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メルマガ「製品設計知識」2022年6月11日号

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田口技術士事務所 代表の田口です。

先日、金属材料をメインに使用されている設計者に、プラスチック材料の特性について解説する機会がありました。この方にとっては初めて聞く内容が多かったようで、面白かったと言って頂きました。そこで今回はプラスチックの強度設計において注意すべきポイントについていくつか述べたいと思います。

<プラスチック製品の強度設計のポイント>

プラスチックは軽量で加工しやすく、多様な用途で利用される工業材料です。しかし、金属材料とはかなり異なる材料特性を持っており、それらに十分配慮しないと品質トラブルに直結するナイーブな材料でもあります。以下にプラスチックの強度設計で特に注意すべき5つのポイントを紹介します。

① カタログ値は保証値ではない
金属材料の引張強さや降伏応力は、最低保証値であることが多いです(材料によって異なる)。一方、プラスチックは配合剤の量、金型仕様、成形条件などによって材料特性が大きく変動するため、カタログ値はあくまで参考データという扱いです。材料メーカーのカタログには必ず「代表値であり保証値ではありません」という但し書きがあります。量産時の材料特性の実力値がどの程度なのかを十分に検討し、下記のストレス・ストレングスモデルを理解した強度設計が不可欠です。

ストレス・ストレングスモデル

② 経年劣化
金属材料はすばらしい材料ですが、腐食という欠点があります。一方、プラスチックは腐食の心配はないのですが、経年劣化が生じるという大きな欠点を持っています。熱や紫外線、水分、薬品などによって劣化し、強度が低下します。したがって、製品の使用環境条件を考慮し、耐用年数の期間内にどの程度の特性低下が生じるかを見極めなければなりません。下記のRTI(相対温度指数)は10万時間(約11.4年)経過後、初期の物性が50%に低下するときの温度を示しており、熱劣化の程度がわかります。

RTI(相対温度指数)

③ 粘弾性特性
プラスチックは長期間に渡って力をかけ続けると、変形がどんどん進んでいくクリープが発生します。これはプラスチックの粘弾性特性から生じるものです。金属材料にも粘弾性特性はあるのですが、かなりの高温下で問題になる現象です。プラスチックは室温でも容易に粘弾性特性が現れるため、常時荷重を前提とした製品の場合、必ずクリープの影響について検証する必要があります。

④ 使用環境条件の変化に敏感
プラスチックは使用環境条件の変化に敏感に反応します。特に温度の変化には十分に注意する必要があります。金属材料は常温から10~20℃程度変化してもほとんど影響はないですが、プラスチックの場合はかなり特性が変化します。カタログに載っている特性値は常温のものですので、製品が使用される上下限の温度における特性値を入手する必要があります。

⑤ 耐薬品性
プラスチックは薬品とプラスチックの組合せによって、耐薬品性が異なります。問題になりやすいのは、ABSやポリスチレンのような非晶性プラスチックのソルベントクラックです。プラスチック製品では定番の品質不具合であり、数々のリコール、製品事故の原因になっています。

ソルベントクラック

プラスチックの強度設計では、上記について十分に配慮した上で、適切な材料選択と形状設計を行うことが重要です。

 

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