【設計者のための本】トヨタの強さの秘密-日本人の知らない日本最大のグローバル企業

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『トヨタの強さの秘密 日本人の知らない日本最大のグローバル企業』
酒井崇男 講談社現代新書

 

 

製品開発戦略などのコンサルタントである著者が、トヨタの強さの秘密について、TPD(Toyota Product Development:トヨタ流の製品開発)に注目して分析した本です。トヨタの強さの源泉は「かんばん方式」などで有名なTPS(Toyota Production System:トヨタ生産方式)にあると語られることが多いですが、著者はトヨタの強さの源泉はTPDにあるとしています。今や、トヨタの利益に対する貢献度で言えば、TPDが95%以上、TPSは5%以下であるというのが著者の主張です。

 

TPSに関する書籍や情報は非常に多いですが、TPDを詳しく解説したものはあまりないので、著者の主張には色々と気付かされる点が多く、非常に勉強になる本だと感じます。

 

 

 

著者の前著『「タレント」の時代-世界で勝ち続ける企業の人材戦略論』を昨年読み、非常に面白かったので本著も手に取りました。前著における主張と同様に、本著でもトヨタの強さの秘訣は売れるものを生み出せる力(TPD)だということを、様々な観点から述べています。前著はその中でも売れるものを生み出せる人材(著者が言うところの「タレント」)に焦点を当てていましたが、本著では売れるものを生み出せるトヨタの仕組みに焦点を当てて解説しています。

 

 

私はずっと設計を仕事にしてきているので、売れるものを生み出すことがいかに重要かが本当によく分かります。「設計効率を上げよう!」「歩留りを向上させよう!」などと、各企業は様々な改善活動を日々行いますが、苦労して立ちあげた製品が売れなければ、全く意味のない活動になってしまいます。どれだけ優れた製造技術や設計ノウハウを持っていても、売れなければ利益を稼ぎ出すことはできません。

 

会社員時代にも、苦労して製品を立ち上げたものの、目標の数パーセントしか売れないような製品もたくさん見てきました。部品の生産委託先(協力企業)には話が違うと不満を言われ、営業部門と設計・開発部門では、お互いに相手のやり方が悪いと言い合う。そのような製品もいくつかありました。

 

しかし、組織の中にいて思っていたことは、なぜ売れなかったのかをしっかり見極め、それを次に生かす仕組みを作ることは意外と難しいということです。それは様々な理由が考えられます。以下はその一例です。

 

■問題がいくつもの組織にまたがる
 ⇒設計・開発部門/営業部門/企画部門など。各組織は他の組織のやり方が悪いと考えている


■製品立ち上げの最終的な責任者が経営者であることが多い
 ⇒経営者の判断を批判するのは難しい


■誰もが失敗すると思っていたようなプロジェクトでも大成功することがある(逆もある)
 ⇒何がよくて、何が悪いのかの判断が難しい


■失敗の原因が複雑かつ複合的であることが多い
 ⇒原因の実態が掴みにくく、対策を打ちにくい

 

トヨタの主査制度は、このような問題に対する一つの答えなのかもしれません。

 

もちろん、トヨタの主査制度を真似すれば、売れるものが簡単にできるかというと、そうではないと思います。ほぼすべての企業はトヨタより圧倒的に小規模ですし、実は作るものがトヨタ程はっきりとしていません(基本的にトヨタの売るものは自動車のみ)。また、主査を務められるような人材は非常に限られていますし、育成にも時間がかかります。

 

各企業が自社の事情に応じて、試行錯誤しながら売れるものを生み出す仕組み作りを模索していかなければならないと思います。その試行錯誤の活動には従業員だけではなく、経営者の参画が不可欠なのは言うまでもないでしょう(中小企業においては、経営者自身が主査のような活動をするべきでしょう)。

 

 

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