『10年後、生き残る理系の条件』
竹内健 朝日新聞出版社
元東芝のフラッシュメモリのエンジニア、現在中央大学教授の著者が、理系の人間がどのようにスキルを身に付け、生き残って行けばよいかについて、自身の半導体業界における体験を踏まえつつ語っている本です。技術者のキャリア本はたくさんの種類が出版されています。しかし、この10年で最も変化が激しい業界の一つである半導体出身で、技術者としてのキャリアを成功させている著者の話は、これからの時代を勝ち抜きたい技術者にとって、大いに参考になるものだと思います。
理系や技術者と言っても幅広く、どんな技術者にでも通用する「キャリア成功の法則」はないと思っていますが、会社に依存してキャリアを構築できる時代は、既に過ぎ去っているのは間違いないでしょう。
また、技術者の置かれている状況は、業界により大きく異なります。著者の所属していた半導体業界は、この10年で天地がひっくり返るような変化が起こっており、変化に対応できている技術者と、できていない技術者の差が大きいのだと思います。最近は家電業界が同じような状況になりつつあります。かつて日本が家電王国などと言われた時代がうそであるかのようで、家電業界はリストラや海外企業からの買収話ばかり。家電業界の技術者も、この変化に対応できるかどうかが、今後のキャリアに大きく影響すると思います。
他の業界も今後どうなるかは、誰も予想できません。自動車業界は好調を維持している数少ない業界の一つですが、こちらも10年後どうなるか分からないことは、半導体や家電の現在の状況が教えてくれます。逆に、IoTやフィンテックなど、これまで存在しなかった業界も生まれるはずです。自分自身の専門分野を新しい業界に対応させることも重要なのだと思います。
私自身、企業を辞めて独立技術者となったのは、大企業での技術者としてのキャリア構築に難しさを感じたことも理由の1つです。私は理系の端くれとして、技術コンサルタントという特殊な部類のキャリア構築を目指そうとしています。10年後、企業に残っていた方がよかったと感じるのか、独立してよかったと感じるのか分かりませんが、独立してよかったなと言えるように頑張りたいと思っています。