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製品設計における文書化の重要性 - 製品設計知識

製品設計における文書化の重要性

更新日:

2015年12月にプラスチックス・ジャパン.comに寄稿した記事を一部改変して掲載します。

 

 

ビジネスの様々な場面において、文書にして残すこと(文書化)の重要性は多くの人が理解していることだと思います。製品設計においても、文書化は強調しても強調し過ぎることがないぐらい重要です。

 

しかし、文書化を適切に実施できている企業は多くありません。大企業においては、不必要に多くの文書を作成するため、設計者に大きな負荷が掛かっているケースが多いようです。中小企業においては、必要な文書を作成できていないケースが目立ちます。本稿では後者の中小企業を念頭に、製品設計における文書化の重要性について解説したいと思います。

 

 

 

製品設計における文書

製品設計においては、非常に多くの文書を作成することになります。下表は顧客から委託を受けて、製品を設計・製造する企業を想定した場合の主な文書の例です。

 

  代表的な文書
設計部門内

製品設計プロセスで
作成する文書

各種設計書詳細設計書、FMEA、FTA 等
各種技術レポート強度計算結果報告書、評価試験結果報告書、モニター試験結果報告書 等
設計審査資料設計審査に用いる文書一式
設計部門外

顧客⇒自社

各種契約書製品の秘密保持に関する契約、開発委託に関する契約、取引条件に関する契約 等
購入仕様書購入する製品に関する要求事項(性能、仕様等)をまとめたもの
自社⇒顧客納入仕様書納入する製品の仕様をまとめたもの
図面(承認図)納入する製品の簡易的な図面
<自社内>
設計部門⇒製造部門
QA表設計部門から製造部門への要求事項などをまとめたもの
図面(製品図/部品図)製品や部品の詳細な図面
自社⇒外注企業各種契約書部品の秘密保持に関する契約、取引条件に関する契約 等
購入仕様書購入する部品に関する要求事項(性能、仕様等)をまとめたもの
図面(部品図)部品の詳細な図面
外注企業⇒自社納入仕様書納入する部品の仕様をまとめたもの

 

 

製品設計において作成する文書は大きく分けて2つあります。1つは設計部門内で使用するために作成する文書。もう1つは顧客や外注企業など、設計部門以外の組織と情報を共有するために作成する文書です。設計の実務をやっておられる方なら分かるように、設計者の業務時間のかなりの部分が、文書作成に費やされているのが現実だと思います。

 

 

 

文書化の目的

文書を作成する目的は何でしょうか。文書化というと「手間がかかる」「時間のムダ」といったネガティブなイメージを持つ人もいるかもしれませんが、まずは何のために作成しているのかを考えてみましょう。

 

 

ISOの専門委員会TC176では、文書化の目的として次の3つを挙げています。

 

 

【文書化の目的】

情報の伝達(Communication of Information)
適合性の証明(Evidence of conformity)
知識の共有(Knowledge sharing)

 

製品設計に限定して文書化の目的を私なりに整理すると、以下のように表現することができます。

 

【製品設計における文書化の目的】

1. トラブルの未然防止

2. トラブル発生時の被害低減

3. 設計力強化

 

 

それぞれについて説明します。

 

<トラブルの未然防止>

文書化は2つの場面でトラブルの未然防止に役立てることができます。

 

(1)情報共有の不適切さに起因するトラブルの防止

設計部門にとって、顧客や外注企業、製造部門とのトラブルの多くは、情報共有の不適切さに原因があると思います。下表のようなケースが典型的です。

 

 
情報共有されていない・製造上のバラツキに関して自社と顧客で情報共有されていない。
・どの部分までを外観範囲とするか情報共有されていない。
・測定方法や検査方法について情報共有されていない
・責任の所在について明確にしていない
情報共有されているが不適切・最新の情報が何か分からない。
・最終決定が何か分からない。
・知っている人と知らない人がいる。
・口頭のみで伝えたため忘れてしまう。

 

新規性が高い製品であったり、顧客に技術的な知識がなかったりする場合には、特に情報共有の不適切さに起因するトラブルが発生しやすくなります。また、情報の洪水のような製品設計プロセスにおいては、口頭のみでの情報共有はトラブルの原因となりやすいものです。「人は忘れやすい」「人の情報処理能力には限界がある」という前提に立って、適切な文書で情報共有することが大切です。

 

図面は情報を共有するための最も一般的な方法で、ほとんどの企業が作成していると思います。しかし、外観基準や包装仕様、品質保証範囲など、図面には記載しにくい詳細な情報を共有できる仕様書をしっかり作成している中小企業は少ないようです。仕様書を作成しない企業は、顧客との重要な取り決め事項などを口頭やメール、議事録などだけで共有しています。そのような情報は担当者が変わったり、時間が経過したりすると、取り決め自体の存在が分からなくなることもあります。また、取り決め内容の更新を適切に管理することも困難です。仕様書をしっかり作成するだけで、かなりのトラブルを回避することが可能になります。

 

 

 

(2)品質向上によるトラブルの防止

製品設計プロセスにおいては、詳細設計書やFMEAなど多くの文書を作成します。これらの文書を作成する品質上のメリットが2つあります。1つは設計は文書化することによって精度が上がるということです。設計者が頭の中だけで考えるのと、設計の根拠を文書にするのでは、精度が大きく異なります。後者の方が圧倒的に高精度になることは言うまでもありません。もう1つの理由は、設計審査を実施しようと思ったら、議論すべき対象(設計の根拠)を文書化しないと、議論できないということです。多くの人の目にさらされ、議論された設計の品質は間違いなく向上します。

 

 

<トラブル発生時の被害低減>

市場で製品にトラブルが発生した場合、顧客との間で責任問題が生じることがあります。要求事項や品質保証範囲などを図面や仕様書で文書化していなかった場合、どうしても受注側の方が不利になりがちです。トラブル発生時の自社の被害を小さくするためには、事前に自社が取り得る防衛手段を顧客に認めてもらう努力とその文書化が必要になります。

 

 

<設計力強化>

製品設計プロセスで作成した文書は、設計資産となって次回以降の製品設計を効率化、高度化することに大きく貢献します。また、設計ノウハウが設計者に属するのではなく、組織に属するようになり、人の異動や入れ代りがあっても、組織としての設計力を維持することができます。

 

 

 

 

文書化の課題と対策

文書化の目的はよく分かるが、そのための人員の余裕がないという中小企業もあるかもしれません。また、時間をかけて文書を作成しているものの、あまり活用できていないという中小企業もあるでしょう。それらについての対策を考えてみたいと思います。

 

 

<課題と対策① 文書化の効率化>

文書化に時間がかかる大きな理由の1つは、帳票に問題があることです。帳票自体がない、帳票に書く内容に不要なものや重複がある、などといったケースです。帳票がないとスキルのない人は何を書けばよいか迷うし、不必要なことまで時間をかけて書いてしまいます。また、帳票を作成する担当者は、良かれと思って帳票にあれもこれもと入れてしまいます。文書化する目的を理解した上で、「必要最低限」の内容を「漏れなく、ダブりなく」帳票に入れることが重要です。また、帳票は作成したら終わりではなく、作成者と使用者の両者により積極的に改善を進めて行くことも忘れてはいけません。

 

 

<課題と対策② 文書の活用>

文書化はしているものの、文書自体があまり活用できていないという話もよく聞きます。その理由のひとつは、作成した文書を探し出すのに時間がかかることではないでしょうか。文書を早く探し出すコツはいくつかありますが、最も手っ取り早いのは電子化です。しかもただ電子化するだけではなく、ファイルの中身まで全文検索できる仕組みを導入することです。クラウドサービスが充実してきているので、非常に安価に全文検索の仕組みを導入することができます。私は持っている資料のほとんどを全文検索できる状態で電子化していますので、資料を探すのに時間がかかるということはあまりありません。全文検索どころか、多くの文書を紙ベースで管理をしている企業がまだあるのであれば、大至急電子化に向けた取り組みを開始することをお勧めします。

 

 

 

 

おわりに

文書化の重要性は言われなくても分かっている、当たり前のことだ、と思われる人が多いかもしれません。しかし、多くの経営指南書、ビジネス書にある成功ノウハウは当たり前のことばかりしか書かれていないものです。すなわち、経営において当たり前のことがいかに難しいかを物語っていると思います。製品設計においても、文書化を進めることは企業の競争力を上げるためには当然やらなければならない、当たり前のことであると思います。文書化する労力を経費と捉えるのではなく投資と捉えて、当たり前に行うべき文書化をしっかり進めて行くことが重要だと思います。

 

 

<参考資料>
ISO/TC 176/SC2/N 525R2 Guidance on the Documentation Requirements of ISO 9001:2008

 

 




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