コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった
マルク・レビンソン(著) 村井章子(訳) 日経BP社
エコノミストである著者が、コンテナがいかにして、世界の物流を変えて行ったのかを詳細に調べ上げて書いた力作です。コンテナに関する出来事を300ページ超に渡って解説しており、非常に読み応えがあります。また、著者がいかに丹念にコンテナの歴史を調査したかについては、巻末に掲載されている参考文献類の量を見れば理解できます(83ページに渡って参考文献が紹介されています)。著者がコンテナが世界を変えた立役者だと強く感じていることを物語っていると思います。2007年発行の本ですが、今読んでも内容的には全く問題ありません。
この本を読むと、コンテナ(コンテナを含む物流システム)の革命が、困難な道のりであり、達成した暁にいかに世界を変えたのかを理解することができます。コンテナにこれだけ多くの物語が詰まっているとは、私自身全く予想していませんでした。今何気なく使っているサービスも、先人たちの血と汗と涙の上に成り立っていることを理解しなければならないと感じました。
コンテナ物語は、現在の私たちにも様々なことを示唆していると思います。
私が本著で得られた気付きを以下に箇条書きしてみます。
・既得権益を打破することの大変さ
⇒かつては港湾労働者団体が強い交渉力を持っており、理解不能なルールがまかり通っていた。
・先を読むことの難しさ
⇒コンテナの将来性をほとんどの人は気付くことができなかった。
・起業家精神の重要性
⇒多少無茶なことでもやってしまう人がいないと世界は変わらない。
・労働力が機械化される時に起こり得る葛藤
⇒港湾労働者に実際に起きた。今後はAIでも起きるのかもしれない。
・標準化を進めることの難しさ
⇒利害相反をどう調整するか。合理的な判断だけでは物事は前に進まない。
・物流の革新が現代のグローバル化を形作った
⇒中間財をやり取りするグローバルサプライチェーンは、コンテナなしでは成立しなかった。
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