1月の始めに台湾(台北)に行って来ました。2度目の台湾でしたが、毎日が小雨という天気以外は、観光も食事も大満足の旅行となりました。なじみのある製品が町中に溢れ、日本人が海外で住むなら最も違和感のない国なのではないかと思います。
台北旅行で”設計”に関して気付いたことをいくつか報告したいと思います。
1.町に高齢者が少ない
日本の町は子供や若者よりも、高齢の方が多いと感じることもありますが、台北の町では高齢者をあまり見かけませんでした。私たちが行った場所が観光地だということや、台湾の65歳以上の比率(11%:2012年)が、日本(26%:2014年)と比べて低いというのも理由かもしれません。
しかし、他にも理由もあるような気がします。その一つはアクセシブルデザイン(ユニバーサルデザイン)がまだ進んでいないことです。
上記の写真が典型的な例です。(宿泊したホテルの玄関)
旅行期間中すべて雨だったのですが、とにかく道やフロアが滑りやすく、何度も転びそうになりました。写真のような転倒注意の看板がいたるところに置いてありました。日本ではそのような経験をほとんどしたことがないことを考えると、転倒に考慮して滑りにくい材質を選んでいるのだと思います。
また、上記の写真のように、多くの建物の入口には段差があります。スロープがないため、車椅子での出入りは難しいでしょう。
写真はないのですが、多くの階段の勾配が急なのにも、少し驚きました。高齢で足が弱い方は苦労するだろうなというレベルです。
高齢化率もまだ低く、お金を掛けてでも配慮しようというモチベーションがないのかもしれません。日本は課題先進国とも言われ、高齢者対策では様々なことを他国に先駆けてやって来たのだと実感しました。
台湾の高齢化率も年々高まっているようですので、日本の高齢者対策(建築や製品など)が台湾で活かせるのは間違いないと思います。距離も非常に近いので、私も何かビジネスができないかなと思案中です。
2.台北の便器
台北では下のような便器をよく見かけました。(写真はTOTO製です)
便器タンクの上にボタンがあるのですが、「大」を流すときは大きい方のボタンを、「小」を流すときは小さい方のボタンを押します。
説明書きはなかったのですが、何となくそうかなと思わせることができます。1つのアフォーダンス設計と言ってもいいかもしれません。(分からない人もいるようですので、アフォーダンスとして優れているかどうかは微妙です)
3.少し危険なエスカレーター
下の写真のようなエスカレーターを見かけました。何かリスクを感じるでしょうか?
東京江戸博物館の下りエスカレーターで、小学生が将棋倒しになり、11名が負傷するという事故がありました。降り口のすぐ近くに横断歩道があり、エスカレーターを降りた小学生の集団が滞留、そこに後続がどんどん降りて来たことにより発生しました。(参考資料※1)
その事例を踏まえると、このエスカレーターはリスクがありそうです。コインロッカーとエスカレーター降り口の距離が狭く、複数の人がコインロッカーで大きな荷物を出し入れしていると人の流れが閉塞される恐れがあります。この場所にコインロッカーを設置するのは望ましくないでしょう。
エスカレーターは事故が多い製品の一つです。エスカレーター自体や周囲に多くの「警告ラベル」が貼られていることが、それを物語っていると思います。設計者の方は、エスカレーターにどのようなリスクがあるのかを考えてみるとよい勉強になるかもしれません。
【参考資料】
※1 内崎 巌 「製品事故に学ぶフールプルーフ設計」 日刊工業新聞社 P46~