『コストは、必ず半減できる。』
三木博幸 日本経済新聞出版社
農業機械で有名なクボタの元エンジニア、現経営コンサルタントの著者が、設計・開発といったものづくりの上流工程におけるコストダウンや、日本のものづくりについて語っている本です。著者のものづくりやコストダウンに対する熱い思いが言葉の端々から感じられ、「まだまだやるべきことがたくさんある」という気持ちにさせてくれます。当然、コストダウン(コストの創り込み)は小手先の手法だけで達成できるわけではなく、組織のマネジメントや経営の視点が必要になります。本書はコストダウン手法の解説書とは異なり、設計者とマネージャーの両方の視点でコストダウンを達成するための考え方が解説されています。すべての設計者はコストと無縁で仕事をすることはできませんので、本書を読んで多くの事を感じることができるのではないでしょうか。
私も設計者として、十数年仕事をして来ましたが、コストダウンに関する仕事は全体の1/3ぐらいを占めていたと思います。プラスチック成形品を極限まで薄肉化したり、製造現場に行ってストップウォッチ片手に、コストの切り詰め策の検討などもやっていました。それだけに、著者の主張には色々と感じるところがあります。
私が思うコストダウン(コストの創り込み)の要諦は、次のようなものです。
(1)目的の明確化(目的は売上増?利益増?など。目的によって取る手段が異なる)
(2)適切な目標原価の設定(難易度が高過ぎても低過ぎてもだめ)
(3)目標原価を達成するという意志の共有(経営者、マネージャー、設計者など)
他にも色々ありますが、技術的な手段は後からついて来ることが多いものです。コストダウンがうまく進まない企業は、上記の(1)~(3)が共有されていないのかもしれません。特に経営者やマネージャーがコストより品質や発売日を優先してしまうと、設計者に目標原価達成のモチベーションは働きにくくなります。また、コストは量産開始後のコストダウン活動で何とかできるという気持ちが働きやすいのも、原価目標が達成できないひとつの理由かもしれません。