安全率(安全係数) /safety factor(FS/FoS)

基準値を設計上想定される最大の値で割った値。

安全率(S)=基準値/設計上想定される最大の値

材料強度の安全率であれば以下の式となる。

安全率(S)=基準強さ(MPa)/設計上想定される最大応力(MPa)

 

製品設計においては、製品に作用する荷重や基準強さを正確に見積ることは困難であるため、安全率を設定する必要がある。製品に使用される材料の破壊強度が100MPaで、製品に掛かると想定される最大応力が25MPaであれば、安全率は4となる。応力だけではなく、変形量や各種の性能・指標を基準値に取ることもある。

【基準値の例】
・静荷重による破壊応力(引張、圧縮、曲げ、ねじり、せん断)
・静荷重による降伏応力
・静荷重による弾性限度
・繰り返し荷重による破壊応力(疲労)
・衝撃荷重による破壊応力
・交番荷重による破壊応力
・変形量(剛性)          
・各種の性能/指標(防水性能、期間、距離、繰り返し数、速度 等)     等

 

 

以下の表は安全率の例である。

製品 安全率 情報の出所
 ワイヤーロープの強度
 (天井クレーン用)
 3.55~5
 (ワイヤーロープの等級による)
 JIS B8801 「天井クレーン」

 ワイヤーロープの強度
 (油圧ショベルのテレスコピック機構用)

 5以上  JIS A8340 「油圧ショベルの要求事項」

 駆動装置のチェーンの強度
(高所作業車用)

 5以上
 (1本チェーンの駆動装置のチェーン)
 それぞれ4以上
 (2本チェーンの駆動装置のチェーン)
 JIS B9690 「高所作業車―設計、計算、安全要求事項及び試験方法」
 コンクリートダムの強度  4以上  河川管理施設等構造令施行規則
 圧力容器の強度  3.5~4以上  JIS B8267 「圧力容器の設計」
容器保安規則

安全率の設定は長い経験とノウハウが必要となる作業であり、製品設計における最も重要なポイントの一つである。同じ「安全率3」でも、基準値や最大負荷にどういう値を採用するのかよって全く結果は異なるからである。

材料に発生する応力で考えてみる。使用時に発生する最大応力は、製品を使用者がどのように使うか、また材料や組立の精度などによって大きなバラツキが発生する。また、基準強さも材料自体の物性によりバラツキが発生する。仮にそれらのバラツキが下記図のように、正規分布になっているとすると、平均値同士で計算すると十分な安全率になっても、使用時の最大応力を「平均値+3σ」、基準強さを「平均値ー3σ」で計算すると、ほとんど安全率はないということが分かる。二つの分布が重なる箇所があれば、製品の破壊が発生する可能性があるということである。

sf2

安全率を高くすれば当然コストが大きくなるため、典型的なトレードオフの問題となる。そのため、安全率の設定は設計審査における重要なポイントにしておく必要がある。社内の設計基準として、例えば「安全率3以上とする」というルールを設けていても、基準強さに平均値を使うのか、平均値-3σを使うのかによっては、設計の結果は大きく異なる。また、以下のように基準値や最大に負荷のバラツキを大きくする要因もあるので、それらも踏まえて設計審査を行い、適切な安全率を設定する必要がある。

<「基準値」に影響するもの> 
・材料物性のバラツキ
・材料の異方性
・経年劣化
・製品の耐用年数
・製品の使われる環境(温度、水分、紫外線、腐食ガス 等)  等

<「設計上想定される最大の値」に影響するもの>
・製品の使われ方(使用頻度、使用期間 等)
・製品の想定される使用者(成人、子供、幼児、高齢者、国籍 等) 
・寸法や組立精度のバラツキ  等

 

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最終更新 2017年7月14日 

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投稿日:2016年1月18日 更新日:

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