納入仕様書に何を記載するべきか
以下に納入仕様書への記載例を示します。
内容 | 備考 | |
適用範囲 | 適用される対象製品の明確化 | 図面にも当該納入仕様書が適用されることを明示することが望ましい。 |
守秘義務 | 当該納入仕様書に記載された情報の守秘義務、第三者への開示可能範囲などを明確化。 | 機密事項がある場合に記載する。 |
改訂 | 改訂履歴の記載。改訂方法の明確化。 | 常に最新版を取引先と共有する仕組みを構築する。 |
変更内容の連絡義務 | 記載内容を無断で変更することは不可。変更前に連絡することを義務化する。 | サイレントチェンジを防止する。 |
期限・更新方法 | 仕様書の有効期限を明確化。有効期限が経過した時の更新方法を明確化。 | |
商流 | 各部品の製造担当企業やその商流を明確にする。 | 製造担当企業を勝手に変えてほしくない時に記載する。 |
品質保証範囲 | 責任範囲を明確化。 | <記載内容の例> ・免責条件 ・品質保証範囲 ・製品の使用条件 |
図面 | 必要に応じて外形図等を記載。 | |
製品性能 製品仕様 |
図面では表現できない製品の性能や仕様を記載。 | <記載内容の例> ・性能保証範囲 ・製品の詳細仕様 ・製品の特性 ・評価試験結果 ・使用上の注意事項 ・取扱上の注意事項 ・設置/取付上の注意事項 |
製造方法 | 製造時に必要な要求事項を記載 | <記載内容の例> ・作業標準書 ・QC工程表 ・製造上の注意事項 ・保管管理方法 |
検査方法 | 具体的な検査方法を記載 |
<記載内容の例> |
品質基準 | 具体的な品質基準を記載 | <品質基準の例> ・外観検査方法の詳細(合否基準、外観面の明確化、検査時の照度など) ・気密性試験方法の詳細(合否基準、検査方法) |
包装仕様 納品方法 |
包装、納品に必要な要求事項を記載 |
<記載内容の例> |
記載内容にルールはありません。ルールがないだけに、何を書けばよいのか、何を書いてもらえばよいのかの判断が難しいとも言えます。難しいだけに、納入仕様書を戦略的に使いこなせる企業の方が有利にビジネスを進められると考えます。
まず、自社が受入側なのか納入側なのかによって、記載内容に対する要求が異なります。納入側からすれば、自社の責任範囲をできるだけ狭く、機密事項や製造の制約事項になるようなことは極力出さないようにしたいと考えます。また、受入側からすれば、納入側が不良品を納品しないように製造を厳密に管理させようとします。時には自社の安心のために、機密事項もオープンにさせたいという気持ちも働きます。両社にはそれぞれ自社の利益を最大化したいという思いがあるのは当然のことです。それらを踏まえた上で、両社の妥協点を見出しながら、合意を図っていくというプロセスがどうしても必要でしょう。
よくない事例として、中小下請企業でよく見られる、納入仕様書の記載内容を顧客の要求だけに従い、自社の要求は主張しないまま取り交わすケースです。自社の要求が聞き入れられるかどうかは分かりませんが、それを主張しないことには、顧客にとっては「言うことをよく聞く便利な会社」として扱われるだけでしょう。
自社が受入側の場合でも、必要のない製品仕様まで厳密に管理させることは望ましくありません。納入側の企業努力が続けられるような取り決めにすることにより、両社がWIN-WINの関係となり、結果として自社にメリットをもたらします。
図面と納入仕様書の他にも、基本取引契約書や秘密保持契約書などで取り交わしをしている事項もあると思います。その場合は重複して納入仕様書に記載する必要はありません。
購入仕様書との役割分担は状況により異なりますが、通常、納入仕様書は購入仕様書を元に、両者のすり合わせを経て作成しますので、納入仕様書を最終的な「文書」にする方がやりやすいケースが多いように思います。
図面や仕様書は契約書
賃貸住宅を借りる場合や携帯電話を契約する場合など、我々は必ず契約書にサインをする必要があります。サービスを提供する側にとってなぜ契約書が必要であるかというと、トラブルの未然防止と、万が一トラブルが発生した場合の責任回避、早期解決のためです。自分や自社を守るために契約書が必要なのです。
私は図面や納入仕様書(または購入仕様書)は契約書だと認識しています。中小下請企業のように自社の立場が弱い企業ほど契約書(納入仕様書)をしっかり作成し、戦略的に活用することが望ましいと思います。
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最終更新 2016年3月9日