メルマガ「製品設計知識」2024年3月16日号

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 メルマガ「製品設計知識」2024年3月16日号

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田口技術士事務所 代表の田口です。今回は世の中の変化への設計対応について述べたいと思います。

<世の中の変化への設計対応>

設計とは製品に対する要求事項(インプット)を製造できる形(アウトプット)に変換する一連のプロセスのことです。したがって、インプットが変わればアウトプットも変える必要があります。国内で使用される製品に対する使用者の変化を例に考えてみましょう。

この10年ほどで製品の使用者は様変わりしています。以下の3つの例を見てみましょう。

①高齢者の増加
製品により異なるものの、使用者を想定する際、20~50代をイメージして設計することが多いのではないでしょうか。設計者自分も同じ年代であることが多いため、製品の使いやすさや安全性などは自分自身が使うことを想定すればよいといえます。しかし、日本の高齢化はかなり進んでおり、65歳以上が占める割合である高齢化率は29.0%(2022年)に達しています。また、高齢者の就業率は65~69歳で50.3%(2021年)、70歳以上は18.1%(2021年)になっており、職場も高齢者が増えてます。単純計算で使用者の約3割が高齢者であり、業務用の製品でも多くの高齢者が使用することになります。個人差が大きいとはいえ、体力や認知機能の低下は避けられません。力の衰えをカバーするために設計者が考えもしないような使い方をしたり、安全面に関する注意喚起が伝わらなかったりする可能性があります。実際、高齢になるほど不注意・誤使用による製品事故が増えていることがデータでも示されています(※1)。

※1 経済産業省(リンクのP31) https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/seihin_anzen/pdf/010_01_00.pdf

高齢化率は40%近くまで上昇すると予想されています。家庭用、業務用に関わらず、製品の使用者の多くが高齢者になるということです。高齢者がどのような使い方をするのか、安全性に関して特別に配慮すべきところはないのかなど、設計者は研究を重ねていく必要があるでしょう。

②訪日外国人の増加
日本に訪れる外国人の数が急回復しており、2023年は2500万人を超えたようです。国内向けの製品に関しては、使用者が日本人であることを前提に設計を行っていることが多いのはないでしょうか。しかし、これだけ訪日外国人が増えてくると、国内向けの製品であっても、外国人が使用するケースが増えます。体格や文化が違ったり、日本語が理解できなかったりするなど、日本人だけを対象とした製品とはインプットが異なります。外国人観光客が多く訪れている施設で使用されている製品でも、日本語でのみ使用方法や注意喚起を記しているものがあります。日本語が読めなくても理解できるように英語も併記したり、ピクトグラムを活用したりするなどの配慮が必要でしょう。

③リモ―トワークの増加
リモートワークが普及し、自宅に長時間滞在する人が増えています。これは住宅内で使用する製品の使用頻度や使用時間が大きく伸びることを意味します。例えばエアコンの使用時間はかなり長くなるでしょうし、ドアの開閉回数は何倍にもなります。リモートワークで椅子を使っている人は長い時間座り続けますが、家庭向けの椅子はそれほどの耐久性がないものが多いと思われます。私は自宅で仕事をする時間が長く、椅子がよく壊れます(2~3年に一度)。住宅内で使用される製品に関しては、これまでと同じ耐久性の基準で問題ないか検証する必要があるかもしれません。

世の中の変化を敏感に感じ取り、柔軟に対応していく能力が設計者には求められます。

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