製品の不具合による「誤飲」または「誤飲のおそれ」によるリコールは頻繁に発生しています。リコール事例の原因を学ぶことにより、設計者がどんなことに注意すべきかを考えてみたいと思います。
「誤飲」が原因のリコール事例より学べること
<リコールの特徴>
・子供向けまたは子供が触れる可能性がある製品で主に発生している。
<設計面での教訓>
・子供向けの製品においては、小さな部品が外れてしまうとリコールにつながるおそれがあることを認識した上で強度設計を行うこと。
・玩具はISO8124、EN71、ST基準などの規格化・基準化が進んでいる。規格外・基準外の場合リコールにつながるおそれがあるので注意すること。
・子供向けの製品ではなくても、子供が触れる可能性が高い製品については、誤飲に配慮した設計を行うこと。
・ボタン電池を使用する製品の場合は特に誤飲に配慮した設計を行うこと。
・口に入れることを前提とした製品は特に誤飲に配慮した設計を行うこと。
・子供向けの製品で口に入れられる小さな部品は使用しないこと。
実際のリコール・社告事例
Zebra Japan 株式会社(Flying Tiger Copenhagen )
製品 | 木製玩具 |
公表 | 2015年5月 |
販売時期 | 不明 |
誤飲の発生 | なし |
リコールの理由・原因 | 「衝撃や引っ張る力により商品本体から部品(耳など)がはずれる場合があり、はずれ た部品は小さなものであるため誤飲の恐れがあります。」(Zebra Japan 株式会社HP) |
市場対応 | 製品回収 (個数不明) |
設計面での教訓 (筆者解説) |
・子供向けの製品においては、小さな部品が外れてしまうとリコールにつながるおそれがあることを認識した上で強度設計を行うこと。 |
出典:Zebra Japan 株式会社 HP
日本トイザらス株式会社
製品 | ぬいぐるみ |
公表 | 2015年3月 |
販売時期 | 2012年6月~2014年8月 |
誤飲の発生 | なし |
リコールの理由・原因 | 「ヨーロッパの規格に適応して いないことが判明いたしました。ぬいぐるみの目玉が基準値以下の力で抜けてしまい、お子様が誤飲するおそれがある と判断・・・」(日本トイザらス株式会社HP) |
市場対応 | 製品回収 (個数不明) |
設計面での教訓 (筆者解説) |
・子供向けの製品においては、小さな部品が外れてしまうとリコールにつながることを認識した上で強度設計を行うこと。 |
出典:日本トイザらス株式会社HP
日本トイザらス株式会社
製品 | 玩具 |
公表 | 2014年10月 |
販売時期 | 2013年9月~2014年8月 |
誤飲の発生 | なし |
リコールの理由・原因 | 「セット内容に含まれる「トースト」の一部に強度不足の可能性があることが判明。かじったり、落としたりなどの衝撃を与えることで「トースト」自体が割れ、割れた破片で幼児が誤飲する恐れがあるため。」(日本トイザらス株式会社HP) |
市場対応 | 製品回収 (2250個) |
設計面での教訓 (筆者解説) |
・子供向けの製品においては、小さな部品が外れてしまうとリコールにつながるおそれがあることを認識した上で強度設計を行うこと。 |
出典:日本トイザらス株式会社HP
ピップ株式会社
製品 | 耳かき(LEDライト付き) |
公表 | 2014年10月 |
販売時期 | 2011年9月~2014年9月 |
誤飲の発生 | 1歳児がボタン電池(リチウム電池)を誤飲し負傷(2カ月間入院) |
リコールの理由・原因 | 「電池蓋が容易に外れる構造となっていたために、落下時の衝撃又は人為的に蓋が開けられ、幼児が製品に入っていた電池を誤飲して事故に至った」(消費者庁HP) |
市場対応 | 製品回収 (約13.6万個) |
設計面での教訓 (筆者解説) |
・子供向けの製品ではなくても、子供が触れる可能性が高い製品については、ボタン電池を外れにくくする配慮を行うこと。(工具等により着脱する仕様、耐衝撃性UPなど) <参考情報> |
出典:ピップ株式会社HP/消費者庁HP/国民生活センターHP
株式会社アポロ社
製品 | 玩具 |
公表 | 2014年6月 |
製造時期 | 2007年6月~2014年6月(型番による) |
誤飲の発生 | なし |
リコールの理由・原因 | 「持ち手部分に安全基準(ST基準)に定める引張強度の不足が生じる商品が一部混入」(アポロ社HP) |
市場対応 | 製品回収 (約7万個) |
設計面での教訓 (筆者解説) |
・子供向けの製品においては、小さな部品が外れてしまうとリコールにつながるおそれがあることを認識した上で強度設計を行うこと。 |
出典:株式会社アポロ社HP/消費者庁HP
エイチ・アンド・エム(ヘネス・アンド・マウリッツ・ジャパン株式会社)
製品 | 子供服 |
公表 | 2014年4月 |
販売時期 | 2012年8月~2014年4月 |
誤飲の発生 | なし |
リコールの理由・原因 | 「ベルトのつなぎ目に用いられている金属部分が、破損する可能性があり、誤飲につながる恐れ」(H&M HP) |
市場対応 | 製品回収 (0.6万枚) |
設計面での教訓 (筆者解説) |
・子供向けの製品においては、小さな部品が外れてしまうとリコールにつながるおそれがあることを認識した上で強度設計を行うこと。 |
出典:H&M HP/消費者庁HP
日本トイザらス株式会社
製品 | 乳幼児用押し車 |
公表 | 2013年3月 |
販売時期 | 2012年11月~2013年1月 |
誤飲の発生 | なし |
リコールの理由・原因 | 「上部ハンドルを持ち前方に推し進める際に、前輪が車軸より外れる場合があることが判明。また、前輪を車軸に固定している金属ネジおよびプラスチック製ワッシャーも同様に外れ、これらの部品を乳幼児が誤飲する危険性があると判断」(nite HP) |
市場対応 | 製品回収 (0.2万台) |
設計面での教訓 (筆者解説) |
・子供向けの製品においては、小さな部品が外れてしまうとリコールにつながるおそれがあることを認識した上で強度設計を行うこと。 |
出典:日本トイザらス株式会社HP/消費者庁HP/nite HP
株式会社オーラルケア
製品 | 口腔用手指保護具(ゆびガード) ※医科医療時や障害者支援施設、介護保険施設等において医療・介護従事者の指を守るもために使用する製品 |
公表 | 2012年6月 |
製造時期 | 2007年~2012年 |
誤飲の発生 | 1名死亡(破断した製品の一部が体内に入り、咽頭内で浮腫を生じ窒息) |
リコールの理由・原因 | ― |
市場対応 | 販売の一時停止、ホームページ等での注意喚起 (個数不明) |
設計面での教訓 (筆者解説) |
・口に入れることを前提とした製品は、破断=誤飲となる可能性が高い。 ・樹脂は強度のバラツキや経年劣化が起きやすい。樹脂を使用する場合は、十分な安全率を持った強度設計とすること。 ・樹脂は経年劣化により強度が大きく低下するため、使用回数や期間の上限を定めること。 ※株式会社オーラルケアの現行品は、使用回数上限を750回、期間を6か月と取扱説明書に明記している。また、使用開始日を本体に記入するように指示している。 ・傷、ひび割れ等が入らないようにユーザーに注意喚起すること。 ・傷、ひび割れ等が製品に入っていないかチェックするようにユーザーに注意喚起すること。 |
出典:消費者庁HP/株式会社オーラルケア HP/厚生労働省HP
株式会社ダッドウェイ
製品 | 乳児用おしゃぶり用玩具 |
公表 | 2011年2月 |
販売時期 | 2009年10月~ |
誤飲の発生 | なし |
リコールの理由・原因 | 「白黒のボール部の表面が剥離し、誤飲するおそれがあるため」(nite HP) |
市場対応 | 無償交換(白黒のボール部の表面に傷がある場合) (個数不明) |
設計面での教訓 (筆者解説) |
・口に入れることを前提とした製品は、表面の剥離だけでもリコールにつながるおそれがあるため、密着性のよい表面処理の方法を採用すること。また傷が入らないような包装仕様とする必要もある。 |
出典:nite HP/消費者庁HP
エル・エル・ビーン・インターナショナル
製品 | 水筒 |
公表 | 2010年5月 |
販売時期 | 2009年4月~2010年5月 |
誤飲の発生 | なし |
リコールの理由・原因 | 「水筒を落とした際に蓋の飲み口部分が破損し、破損した破片を誤飲するおそれが判明したため」(消費者庁HP) |
市場対応 | 製品交換(蓋部分) (685個) |
設計面での教訓 (筆者解説) |
・口に入れることを前提とした製品は、破損するとリコールにつながるおそれがある。 ・水筒のように持ち歩く製品を落とすことは「予見可能な誤使用」と考え、製品事故につながらないような強度設計をすること。 |
出典:nite HP/L.L.Bean HP
株式会社サンリオ
製品 | バスケットボールゲーム (玩具) 隔月刊誌「キティズパラアイスPEACE キティとあそぼ!クレープの号」付録 |
公表 | 2009年9月 |
販売時期 | 2009年9月 |
誤飲の発生 | 不明 |
リコールの理由・原因 | 「付属のボールが小さいため、小さなお子様が誤って飲み込んでしまう恐れがあると判断」(nite HP) |
市場対応 | 製品回収 (冊数不明) |
設計面での教訓 (筆者解説) |
・子供向けの製品で口に入れられる小さな部品は使用しないこと。 |
出典:nite HP/株式会社サンリオHP
サンスター株式会社
製品 | 乳児用歯ブラシ |
公表 | 2009年2月 |
販売時期 | 2005年9月~2009年2月 |
誤飲の発生 | 不明 |
リコールの理由・原因 | 「強く噛みすぎるというような想定以上の負荷がかかる使用や熱水での繰り返し洗浄等により先端部の軟質ゴムが外れる可能性のあることが判明」(サンスター株式会社HP) |
市場対応 | 製品回収 (3万本) |
設計面での教訓 (筆者解説) |
・乳児用製品において、「強く噛む」「親が熱水で消毒する」という作業は「予見可能な誤使用」と考えて強度設計するべき。 |
出典:消費者庁HP/サンスター株式会社HP
日本ヒューレット・パッカード株式会社
製品 | 「カンフー・パンダ」USBメモリ(販売促進用) ※子供向けの製品ではない |
公表 | 2009年2月 |
配布時期 | 2008年6月~2008年8月 |
誤飲の発生 | なし |
リコールの理由・原因 | 「USBメモリのキャップ(パンダのズボンの部分)を乳幼児が誤って飲み込んだ場合に窒息事故が発生する危険性があることが判明したため」(消費者庁HP) |
市場対応 | 製品回収 (1360個) |
設計面での教訓 (筆者解説) |
・子供向けの製品ではなくても、キャラクター付など子供が手に取る可能性が高くなるような製品の場合は、誤飲のリスクも考慮して設計すること。 |
出典:消費者庁HP/nite HP/日本ヒューレット・パッカード株式会社HP
株式会社バンダイ
製品 | 玩具 |
公表 | 2006年2月 |
販売時期 | 2013年9月~2014年8月 |
誤飲の発生 | なし |
リコールの理由・原因 | 「はぐるま部品の生産ロットの一部において、衝撃等が加わった際に透明のフタがはずれ、中にあるビーズ等の小部品がこぼれ出る可能性があることが判明した。小さな子供が誤飲する恐れがある」(消費者庁HP) |
市場対応 | 部品交換 (個数不明) |
設計面での教訓 (筆者解説) |
・子供向けの製品においては、小さな部品が外れてしまうとリコールにつながるおそれがあることを認識した上で強度設計を行うこと。 |
出典:消費者庁HP/株式会社バンダイHP
※2015年10月時点の下記webサイトの情報等を元に記事にしております。
消費者庁ホームページ
niteホームページ
国民生活センターホームページ
経済産業省ホームページ
各社ホームページ
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