製品設計者のための実務で使える情報サイト

製品設計知識

すべての記事一覧 プラスチック

プラスチックにおける応力とひずみの関係

投稿日:

2017年5月にプラスチック・ジャパン.comに寄稿した記事を掲載します。

 

 

1. はじめに
プラスチックを上手に使いこなすためには、プラスチックの性質をよく理解することが重要である。その中でも応力とひずみの関係は、最も基本的かつ重要な性質の一つだ。今回はプラスチックにおける応力とひずみの関係について詳しく解説する。

 

 

2. プラスチックの弾性変形

応力とひずみが比例関係にあるときの変形を弾性変形、このような関係が成り立つことをフックの法則という。この時、応力σ、ヤング率E、ひずみεはσ=Eεの関係式で表され、グラフは直線となる。この直線の傾きがヤング率(縦弾性係数)だ。ヤング率は引張試験で測定した値と曲げ試験で測定した値を区別するために、それぞれ引張弾性率、曲げ弾性率と呼ばれることも多い。

 

 

図1 フックの法則

 

 

 

弾性変形をする時のプラスチックの挙動は、中学校や高校で学んだばねと全く同じ考え方をすればよい。ばねを引っ張る力F、ばねの硬さを示すばね定数k、ばねの伸びxにおいて、F=kxという関係式が成り立つ。荷重Fが応力σ、ばね定数kがヤング率E、ばねの伸びxがひずみεになったと考えれば分かりやすいだろう。

 

図2 ばねにおけるフックの法則

 

 

 

3. プラスチックのヤング率
フックの法則σ=Eεより、ヤング率Eが大きいほど、変形させるのに大きな力が必要な「硬い材料」だといえる。プラスチックは金属などと比べると柔らかい材料である。プラスチックと各種材料のヤング率の違いを図3に示す。

 

 

図3 プラスチックと各種材料のヤング率

 

 

 

家電などに使われる身近なプラスチック(ABSやPPなど)は、金属と比べると2桁ヤング率が小さいことが分かる。同じ形状のものであれば、同じ長さだけ変化させるのに、プラスチックは金属の1/10~1/100の力で変形させることができる。変形しやすいことにはメリットもデメリットもあるので、プラスチックの特性をよく理解して使用することが大切である。

 

 

 

4. 応力-ひずみ曲線
材料力学は基本的に材料が弾性変形することを前提にしているが、プラスチックの弾性変形範囲は非常に狭いので、設計を行う上では注意を要する。弾性変形以外の部分も含めて、材料の性質を分かりやすく示すために用いられるのが応力-ひずみ曲線である。英語で応力はStress、ひずみはStrainなので、頭文字を取ってS-S曲線とも呼ばれる。図4に引張試験で得られたプラスチックの応力-ひずみ曲線の一例を示す。

 

図4 プラスチックの応力-ひずみ曲線の例

 

 

<弾性変形範囲(引張弾性率/ヤング率)>

フックの法則に概ね従う範囲。グラフがほぼ直線状になっている。この時の傾きがヤング率(引張弾性率)である。プラスチックの場合、完全に弾性変形となる範囲はほとんどないが、実用上、弾性変形として考えてもよいのは、ひずみが1%ぐらいまでといわれている。

 

<引張降伏応力>

応力が増えずにひずみが増える最初の部分、すなわち曲線の最初にできる山の頂上部分を降伏点といい、その時の応力を引張降伏応力という。降伏点が現れる材料の場合、引張降伏応力と引張強さは同じ値となる。降伏応力を超える応力が発生すると、材料が塑性変形してしまうので、そのような応力が発生しないように設計することが基本である。

 

<引張破壊応力>

試験片が破壊する時の応力。降伏点が現れない材料の場合、引張破壊応力と引張強さは同じ値となる。材料によって降伏応力よりも大きい場合と小さい場合がある。

 

<衝撃エネルギー吸収能力>

曲線で囲まれている部分の面積は、衝撃エネルギーを吸収する能力を示す。この部分の面積が大きい材料は、変形させても粘り強く、衝撃に強いということを示している。

 

 

プラスチックの種類により応力-ひずみ曲線は様々な形になる。プラスチックの応力-ひずみ曲線の代表的な形を図5、それぞれの曲線に対応するプラスチックの例を表1に示す。

 

 

図5 応力-ひずみ曲線の形

 

 

 

表1 応力-ひずみ曲線の特徴とプラスチックの例

 

 

同じプラスチックでもグレードや配合剤の有無などにより違った曲線になる。材料メーカーに依頼するなどして、使用材料の応力-ひずみ曲線を入手することが望ましい。

 

 

 

スポンサードリンク

 

 

 

5. 応力-ひずみ曲線の変化
応力-ひずみ曲線はプラスチックの種類によって異なるだけではなく、同じ材料でも条件によって形が変化する。

 

<温度の影響>
温度が高くなると、強度や硬さは低下する一方で、粘り強い性質になる。プラスチック製品を設計する際に、どのような温度環境で使用されるかを考えることは極めて重要である。

図6 温度の影響

 

 

 

<ひずみ速度(引張速度)の影響>
ひずみ速度(引張速度)が速くなると、温度の場合とは逆に強度や硬さが大きくなり、粘り強さがなくなる。

 

図7 ひずみ速度(引張速度)の影響

 

 

 

<ガラス繊維の影響>
ガラス繊維を配合すると、強度、硬さ共に大きく向上するが、粘り強さは低下する。

 

図8 ガラス繊維の影響

 

 

 

 

<熱劣化の影響>

すべてのプラスチックは徐々に熱劣化が進む。熱劣化したプラスチックは伸びがなくなり、脆性材料のような性質になる。

 

図9 熱劣化の影響

 

 

 

6. おわりに
プラスチックの応力とひずみの関係は、材料の種類によって様々なパターンがあり、配合剤の有無や使用環境、経年劣化などによっても変化する。そのような性質をよく知った上で設計を進めることが、トラブルを回避するために重要なことだと考える。

 

 

 

【参考文献】

高野菊雄 『プラスチック材料の選び方・使い方』 工業調査会 

本間精一 『設計者のためのプラスチックの強度特性』 工業調査会

日本機械学会(編) 『機械工学便覧 基礎編 材料力学』

JIS K7161-1:2014 「プラスチック−引張特性の求め方-第 1 部:通則」

JIS K7171:2016 「プラスチック−曲げ特性の求め方」

材料メーカー各社のホームページ、カタログ等

 

 

 

スポンサードリンク

 

関連記事&スポンサードリンク

ブログカテゴリー

ブログアーカイブ

ブログカテゴリー

ブログアーカイブ

-すべての記事一覧, プラスチック

Copyright© 製品設計知識 , 2017 All Rights Reserved Powered by AFFINGER4.