【設計者のための本】世界トップシェアを勝ち取った田舎の小さな工場の奇跡

投稿日:2017年2月6日 更新日:

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『世界トップシェアを勝ち取った田舎の小さな工場の奇跡』
幻冬舎 山中重治

 

オキツモ株式会社4代目社長の山中重治氏が、同社の経営について語った本です。同社は耐熱塗料専門のメーカーです。身近な製品としては、日本に輸入されるフライパンの35%に同社のフッ素樹脂がコーティングされているそうです(2015年実績)。同社は社員数約160名程度、会社の場所も三重県名張市にあり決して便利な場所にあるわけではありません。そのような会社が、どのようにして世界トップシェアを誇る製品を生み出してきたのか、具体的な製品を例にして詳細に述べられています。

 

 

 

私は帯に書かれていた「成功のセオリーを無視することで市場を席巻した開発ストーリーとは」というところに強く興味を惹かれ、本著を手に取りました。読んでみて感じたのは、成功のセオリーを無視しているというよりは、むしろ中小企業にとっての王道の経営だということです。経営者が強い思いを持ち、社員の力を引き出す風土作りに力を入れる。製品やサービスは自社の競争力を発揮できる専門(同社は特殊塗料)に特化し、シナジー効果のある周辺ニッチビジネスを開拓して行く。ニッチで強みを発揮するお手本のような経営です。

 

最近、中小企業の経営者の声を聞く機会がたくさんあります。多くの企業にとって人手不足/人材不足が悩みの種です。九州は自動車関連企業の進出が相次ぎ、中小企業の仕事自体は増えています。しかし、採用面になると、地域の若者が全部大企業に取られてしまい、ハローワークなどで募集してもなかなか集まらないようです。

 

人手不足の話になると、すぐロボットや外国人採用の話が出てきます。それはもちろん大事なことで、これからも議論していかなければならない課題です。しかし、もっと大事なことは自社の仕事を魅力的にすることだとも感じます。オキツモは決して大きい会社ではありませんが、魅力的な製品(仕事)を生み出していると思います。私は本書を読んで魅力的な会社だなと感じましたので、この本を読んだ人の中には、就職したいと考える人もいると思います。本書を社長が出版した理由も、優秀な人材を集めることが目的なのかもしれません。人手不足/人材不足で悩む企業にとっては、本書のような内容を発信できる企業を目指すことが一つの対策になるのではないでしょうか。

 

 
 

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