【設計者のための本】インダストリー4.0の衝撃

投稿日:2016年2月10日 更新日:

 

『インダストリー4.0の衝撃』
足立治男、岩元直久ら16名による執筆 洋泉社

 

 

最近話題のインダストリー4.0(第4次産業革命)について、様々な分野の16名の著者が、それぞれの視点から解説を行っている著書です。本書ではインダストリー4.0を理解するための重要なキーワードとして、以下の5つを挙げています。

 

①スマート工場
②IoT
③マスカスタマイゼーション
④標準化
⑤サイバーフィジカルシステム(CPS)

 

実際インダストリー4.0の未来が本当に実現するのか、はっきりとは分かりません。しかし、日本の製造業の未来や技術者・設計者のキャリアに大きな影響を与えるのは間違いないように思います。これらのキーワードにピンと来ない方は、ぜひ御一読されてみてはいかがでしょうか。インダストリー4.0の大枠を理解するのによい著書だと思います。

 

インダストリー4.0というと、IoT(モノのインターネット)のことで、単純にあらゆる製品がインターネットにつながる世界をイメージしている人が多いかもしれません。しかし、IoTだけがインダストリー4.0の本質ではありません。人件費の高いドイツ(日本の1.5倍)が、今後も製造業の世界で勝ち残るためのもっと壮大な戦略で、IoTはその一部分に過ぎません。

 

本書を読むと、その戦略の方向性は日本の企業にとって、決して追い風ではないと感じます。例えば、インダストリー4.0の重要なキーワードの一つは「標準化」ですが、多くの方がご存じの通り、日本人が最も不得意な仕事のうちの一つが標準化です。また、インダストリー4.0で最も熱い戦いのうちの一つが、製造プラットフォームサービス(※1)の構築競争ですが、それらは標準化を前提に成り立つビジネスモデルです。今後、日本企業や日本人技術者の強みを活かしつつ、このインダストリー4.0にどう対応していくかが大きな課題であると感じました。

 

 

※1 製造プラットフォームサービス
標準化された生産設備をフルターンキーで新興国等の企業に提供、生産設備をインターネットにつなぎ、様々な改善や付加価値の提供を継続的に提供するサービス。シーメンスやボッシュなどがビジネスの構築を進めている。GoogleやFacebookなどといった、インターネット業界におけるプラットフォームのような存在と比較されて議論されることがある。

 

 

<参考情報>
インダストリー4.0関連の情報は変化が激しいので、本書(2015年8月発行)では少し古くなっている可能性があります。経済産業省の新産業構造部会のwebサイトには、インダストリー4.0などに関する最新の資料が議論のタタキ台のために準備されています。また、インダストリー4.0だけではなく、人工知能や製造業におけるデジタル技術の活用などの資料も掲載されています。非常に参考になる資料ばかりです。

 

経済産業省 新産業省構造部会webサイト

 

 

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