プラスチック製品の設計 ボスの補強効果

投稿日:2017年8月4日 更新日:

ボスはタッピンねじやインサートナットなどを利用して、部品同士を接合する時に使われます。ボスには様々な荷重が作用するため、補強を目的ガセット(三角リブ)や連結リブを用いることがあります。

 

 

今回はそれらの補強効果をCAEで確かめてみたいと思います。(使用ソフト:AUTODESK/Fusion 360)

 

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ボスには様々な荷重が加わりますが、今回は下図のような引張荷重と横向き荷重を考えてみます。引張荷重はネジの軸力、横向き荷重は接合した相手部材から受ける荷重などにより作用します。金型離型時にこれらの荷重が作用することも考えられます。

 

 

 

補強なしボスの強度解析


最初は補強のないボスで解析を行います。仕様は下図の通りです。

 

 

<補強なしボス+引張荷重>

 

応力はボスの根本部分、変形はボス先端部分で最大となっています。

 

 

<補強なしボス+横向き荷重>

 

横向き荷重の場合も、引張荷重と同様に最大応力はボス根本のR部分、最も大きな変形はボスの先端部分で発生しています。

R部分は応力集中しやすい場所ですので、Rの大きさを変えてその影響を確認してみます。

 

 

<補強なしボス+横向き荷重+R寸法変更>

 

Rを0.3から0.5に変更すると、最大応力19.43MPa→14.94MPaとなり約23%低下しました。ボスの強度設計を行う場合は、R寸法を適切に設定することが重要であることがわかります。一方、変形量はR寸法を変更してもほとんど変化がありません。R寸法はボスの剛性にはあまり影響しないといえます。

 

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ガセット付きボスの強度解析


次に2つのガセットで補強したボスを解析します。仕様は下図の通りです。

 

 

 

 

 

<ガセット付きボス+引張荷重>

 

 

 

 

最大応力はガセットの根本部分で発生し、13.47MPa→16.34MPaと逆に約21%大きくなってしまいました。変形量は0.1473mm→0.1339mmとあまり効果はありません。

 

 

 

<ガセット付きボス+横向き荷重(ガセット平行方向)>

 

 

 

ガセットと平行方向に荷重をかけた場合は、ガセットの根本部分に最大応力が発生します。最大応力は19.43MPa→16.24MPaと約16%低下しました。変形量は0.1543mm→0.0925mmと約40%低下しています。この場合のガセットは強度、剛性の両方を向上させることができることが分かります。

 

 

 

<ガセット付きボス+横向き荷重(ガセット垂直方向)>

 

 

 

ガセットと垂直の方向に荷重をかけた場合は、ボスの根本部分に最大応力が発生します。最大応力は19.43MPa→18.83MPa、変形量は0.1543mm→0.1521mmとガセットの補強効果はほとんどないことが分かります。

 

上記の結果より、荷重が掛かる方向に対して効果が高い位置にガセットを設置することが重要であるといえます。また、補強なしボスと同様にボスおよびガセットの根本は応力集中に注意する必要があります。

 

 

 

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連結リブ付きボスの強度解析


最後に連結リブ付きのボスの強度解析を行います。仕様は下図の通りです。

 

<連結リブ付きボス+引張荷重>

 

最大応力はボスの根本部分に発生し13.47MPa→14.82MPaへと微増、変形量は0.1473mm→0.1124mmと約24%低下しました。

 

 

<連結リブ付きボス+横向き荷重(連結リブ平行方向)>

 

最大応力は壁-ボス接合部の上部で発生し、19.43MPa→12.96MPaと約33%低下しました。変形量は0.1543mm→0.0742mmと約52%低下しています。この場合の連結リブは強度、剛性の両方を大きく向上させることが分かります。

 

 

<連結リブ付きボス+横向き荷重(連結リブ垂直方向)>

 

最大応力は壁上部のR部分で発生し19.43MPa→20.6MPaと微増、変形量は0.1543mm→0.0853mmと約45%低下しています。この場合の連結リブは剛性にのみ効果があることが分かります。

 

上記の結果より、連結リブの高さや壁までの距離が強度と剛性に影響があることが予想できます。

 

以上の結果を整理すると以下のようになります。

   荷重 最大応力
(MPa)
変形量
(mm)
補強なし  引張荷重(20N) 13.47 0.1473
横向き荷重(10N) 19.43 0.1543
補強なし
(R寸法0.3→0.5に変更)
横向き荷重(10N) 14.94 0.1505
ガセット付き   引張荷重(20N) 16.34 0.1339
横向き荷重(10N)
※ガセット平行方向
16.24 0.0925
横向き荷重(10N)
※ガセット垂直方向
18.83 0.1521
 連結リブ付き    引張荷重(20N)  14.82 0.1124
 横向き荷重(10N)
※連結リブ平行方向
12.96   0.0742
 横向き荷重(10N)
※連結リブ垂直方向
 20.6  0.0853

 

ガセットや連結リブを用いてボスを補強する場合は、作用する荷重の向きに合わせて、適切な位置に設置することが重要であることが理解できたのではないでしょうか。

 

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